さみしいこと言わないで。

先日ある70代の方とお話ししていた時のこと。
「今みんな長生きだけどさ、人にお世話してもらわなきゃいけない状態になってまで生きていたくないよ。」
とつぶやきました。
みんな、こう言うんです。うちの親もそうです。
気持ちはわかります。
私だってそう思う。
いつまでも、元気で、自分のことは自分でやれる状態でいたい。
よぼよぼになってまで生きていたくない。

でも、だからといって自ら命を断つなんてできない。
こんな私でも、もし不意にいなくなってしまったら、
食事も喉を通らないほど悲しんでくれる人が、
たぶん10人くらいはいるんじゃないかと思う。
いろんな人に迷惑だってかけてしまう。
それに何より、自分で死ぬなんて、痛いしこわい。

自分で寿命を決められない以上、仕方ないんです。
ある程度の年齢になったら、人の手を借りなければならない。
そういうものなんです。
でも、世の中、「人の世話になるくらいなら、、、」って考えている人のなんと多いことか。
みんな真面目なんですよね。自分のことは自分でしなさい、人様に迷惑をかけるな、って
教わって生きてきたから。でも、それってある意味優生思想だと思うんです。
たとえばもし自分に生まれつき障がいがあって、
人の世話にならなきゃ生きていけなかったら、生きててはいけないんですか?
そんなに人の世話になるのっていけないことでしょうか。

私は後見人の仕事をしていますが、私もこんな風に歳をとりたいなあと思う被後見人の方が何人かいます。
みなさん、私やヘルパーさん、ケアマネさんなど、お世話してくださる方に、
笑顔でありがとう、うれしいと言ってくださいます。
こちらこそありがとうございます、と思います。

人の世話になっていても、人をしあわせにすることができるんです。
だから、人の世話になってまで生きていたくないなんて言わないでほしいのです。
みんな、あまりにさびしすぎます。
人の世話にならなくてすむわけがないじゃないですか。
じゃあなたはこれまでずーっと、人の世話にならずに、迷惑かけずに生きてきたんですか?
ちがいますよね。
若くて元気だって、生きている以上、多かれ少なかれ、ひとの世話になってるんです。
もし申し訳なくて…と思うのだったら、お世話になったらその分、
「ありがとう、うれしいよ」と言葉にして、
お世話してくれる人をしあわせにしてほしいのです。
私は、そんなふうに歳をとりたいなあと思っています。